■ついに大晦日。外は雪景色であります。春以降、自宅と実家の往復に明け暮れたし、その間に演奏活動やら"祝祭週間"(およびそれに準ずるもの)があったりもしたしで、やっぱり「あっという間」の1年でありました。聖地巡礼、できなかった。石垣島にも行きたかったけどダメ。信州の温泉に行くっていう計画もあったのだが、敢え無く頓挫。今年はまぁ仕方がなかったと言えばそれまでだが、もうちょっと「潤い」のある生活もしたかったよなぁ、と...。来年は、年明け早々に両親が老人ホーム入所となる運びなので、今年のような"無理"はしないでも済むはず。フリーランス3年目ともなりますのでね、さらなる安定化へ向けて努力していかないと。
■というわけで(?)、恒例の「ワタシが選んだ2005当団ベストCD/DVD」および「ワタシが選んだ2005フィルハーモニカー・オブ・ザ・イヤー」の発表を行わせていただきます。
☆ワタシが選んだ2005当団ベストCD/DVD
●コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲 他/シュミット(Vn)&小澤征爾
急に思いついたのだけど(苦笑)、今年からは"ベストCD"と"ベストDVD"をそれぞれ選ぶようにしてみたい。音声のみならず映像記録もコンスタントに発売されるようになりましたからね、それぞれのベスト盤を選んでみても良いでしょう。
ということで、CDの方はベンヤミン・シュミットのソロによるコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲(他)とさせていただく。昨年(2004年)のザルツブルク音楽祭におけるライブ録音。伴奏を務めたのは小澤征爾指揮による当団。これを選んだ理由は単純明快で、今年一番リピートして聴いたから。買ってきたCDも、一度聴くとそれ以降なかなか"針を落とす"(死語だね^^;)機会を持たないものなのだが、ことこのCDについてはだいぶ聴いた。で、その度毎に楽しんだ。本CDのことは9月の当欄に記していたので、それを転記させていただくことで「受賞理由」に代えさせていただきたい。
大変気に入って何度も聴いてるのがシュミットのコルンゴルト。これには小澤指揮当団バックによるヴァイオリン協奏曲が入ってて、これが滅法いいんですわ。すんごく「美しい」演奏。曲が元々そういうものだけど、当団が演奏するとその美しさがまた格別で。先にムター&プレヴィン夫妻の同曲CDも入手したが、こっちはロンドン響の演奏(=カップリングのチャイコフスキーが当団で、これはどう考えたって「逆」だろう...)。これもいい演奏なんだけど、「まるで映画音楽のような」コルンゴルトの曲が「まるで映画音楽のように」聞こえてしまうのね。でも、当団との演奏はそうじゃない。後期ロマン派の名残とでも言うか、実にこうしっとりとした"純クラシック"的色彩を湛えた曲として響く。小澤氏もこういう合わせものは上手いから、いやほんと、これは何度聴いても楽しい。先にFMで放送された際にも同じように楽しんだが、CD化されて気軽に楽しめるようになったのが吉。これ、オススメです。(2005年9月21日付日々雑感)
●J.シュトラウス:喜歌劇「こうもり」/グシュルバウアー指揮ウィーン国立歌劇場
DVD部門(^^;のベスト盤は1980年のウィーン国立歌劇場公演「こうもり」としたい。ビデオテープおよびLD時代を含めて初出。なぜ今まで発売されなかったのか不思議なくらいの豪華出演陣による公演だ。でもって、文句なしに楽しい。何がどう楽しいのかは、またまた以前の当欄記載内容を転記させていただくことで、その説明に代えさせていただければ。
いやぁ、なんともまぁ懐かしい歌手陣。でもって、こりゃすんげぇ豪華だ。アイゼンシュタインがヴァイクル、ロザリンデがポップ、アデーレがグルベローヴァ、ファルケがベリー(大好き!)、フランクはクンツで、オルロフスキーがファスベンダー。溜め息...。故人が多いのがなんとも寂しい限りだが、しかしまぁ実に豪華で、楽しく、でもって上質な公演でありますよ(ついでに書けば、アルフレート役は「今もその役をやっている」ホプファーヴィーザー。野村克也が「生涯一捕手」なら、ホプファーヴィーザーは「生涯一アルフレート」だな^^;)。指揮は当時オーストリア期待の星だった(!?)グシュルバウアーで、これまた活き活きとした"棒捌き"を見せてくれてるし>クライバーとは較べようもありませんが...。プロダクションは、お馴染みの(かつ、今も現役の!)シェンク演出によるもの。どうやらこの公演の1年前がプレミエだったようなので、舞台装置などもピッカピカ(^^;。いやほんと、実に感慨深い映像でありますわ。よくぞDVDを出してくれたと、TDKコア社にブラヴォー!
豪華歌手陣は、歌もさることながら演技も上手い! みんなノリノリで楽しそうに演じてくれてるので、見ているこっちも実に幸せな気分。私、終始ニンマリ&ゲラゲラでありました>夜中に... 一人で...(苦笑)。グシュルバウアー指揮のオケもグー(死語^^;)。"往年の名手"たちがまだ現役バリバリでやってる時代ですからね(=ちなみにコンマス・プルトはヘッツェルとヒンク)、歌い回しや音色の"ウィーン色"が今よりも濃厚。そんなこんなで貴重な記録であると同時に、最高に楽しい「こうもり」でもあって、これは絶対にオススメであります。見るべし。(2005年12月5日&6日付日々雑感)
☆ワタシが選んだ2005フィルハーモニカー・オブ・ザ・イヤー
●ヴォルフガング・トムベック氏(ホルン奏者)
今年はもうこの人で決まり。二度目の受賞(たぶん>って、調べろよ^^;)となるけど、文句なしということで。
ソロ、室内楽、そしてオケ。今年はさながら「トムベック・バブル」とも言うべき"活躍ぶり"だったわけだが、中でもソロ演奏を披露してくれたことは、ファン待望のビッグニュースであった。これまで「頑なに」と言いたくなるほどソロ活動を敬遠してきたトムベックが、満を持して臨んだソロ演奏。ご本人は相当なプレッシャーの中で演奏を行ったようだけれども、しかしまぁ、やっぱり「素晴らしかった」のでありますよ。"ホルン奏者"という枠を超え、全"音楽家"の中でも傑出した存在。これまた過去の当欄記載内容を転載させていただくことで、「素晴らしさ」の説明とさせていただければ。10月19日に行われたウィーンフィル友の会例会を拝聴しての所感であります。
前半のコンサートで演奏されたのは、ベートーヴェンのホルンソナタ、シューマンの「アダージョとアレグロ」、R.シュトラウスのホルン協奏曲第1番(ピアノ伴奏版)という、まさに「王道」を行くプログラム。アンコールにはなんとプーランクの「エレジー」が。いやもう、この演奏には打ちのめされましたわ。冒頭のベートーヴェンは、ご当人も最後にわざわざ「不本意な出来だった」とおっしゃっていたくらいで、確かにキズの散見される演奏ではあった(=この後いくつかのコンサートが控えており、そのリハーサル等でだいぶお疲れだった由)。でもね、はっきり言って「あれで不本意と言われては...」ですよ。だけど、ご本人がそうおっしゃるからには、ここでもこれ以上の論評は避けましょう。圧巻はシューマン以降。ロマン派初期から後期、そして近代に至る「ロマン派音楽の系譜」のその神髄をたっぷりと聴かせていただいたと、そういう演奏でありました。和声進行、音色感、フレージング、歌心... とにかくありとあらゆるものが「かくあらねばならない」姿で表出され、ただただもう感嘆するのみ。ホルン奏者という以上に、彼が如何に傑出した「音楽家」であるか。会場の皆さんは、そのことを改めて実感そして確信したことでありましょう。ほんとにすごい、トムベック。しかーし!後半のインタビューコーナーではご本人から残念なお言葉が。曰く「室内楽はこれからもやっていきたいが、ソロはもういい。オケの首席もそろそろ降りて、イェプストゥルに席を譲りたい」。なんですとーーっ! 確かに、ベルガーもヘグナーも50歳頃を目処に首席を降りました。トムベック父(ヴォルフガンク・シニア)もそうでしたな。でもね、あなたにはもっともっと1番奏者を務めてもらいたいのよ。傑出した音楽家としてのその姿を見せ続けてほしいのよ。「後進に道を譲る」というのは当団ホルン会の佳き伝統であると思うけれど、でも、あなたにはなんとかひとつ1年でも1日でも長く首席を続けてほしいんだけど...。今回の一連の演奏(オケ及びソロ)を聴いて、その思いを改めて強くしたのでありました。署名運動でもやった方がいいかな、マジで。
インタビューコーナーでも彼の「傑出さ」は遺憾なく発揮。ウィンナホルンと一般的なフレンチホルンの違いは?という趣旨で楽器の吹き比べが行われたのだが、これがもう「お見事!」。曲は、ベルリーニ(だったかな?)のオペラの一節とブラームス第2交響曲の1楽章ソロ。フレンチの方は某楽器店から借用したというクルスペのダブルホルンで、トム大将は演奏会直前に渡され、かつ「何か吹いて」ということを言われたのだとか(^^;。そういう楽器をですね、彼は完璧に吹いたのでありますよ。音色は確かに違っておりました。クルスペの方が軽くて、会場内に拡散するような感じ。でも、基本的にはどっちも「トムベックの音」(ついでに言えば、奏されたのも「ウィーンの音楽」)。違っていたのは「楽器」だけ。そう、つまり、音色はあくまでも個人に付いて来るものであって、楽器はそれを具現化する道具なのだ、ということ。そのことが、今回の吹き比べでは完全に実証された。あのクラスの人たちになると、どんな楽器を吹こうが「その人の音」がするのよね。だからこそ、「自分が理想とする音と音楽はどの楽器で具現化できるか」が楽器選択のポイントになり、だからこそ彼(およびウィーンの奏者たちの多く[と私たち^^:])はウィンナホルンを選択している。そういうことですわな。何を今さら、の話だけれど、しかし、これは非常に重要なポイントなんですよ。ここをきちんと理解していないと「なぜウィーン式の楽器?」を見誤ることになる。(2005年10月20日付日々雑感)
■今年も1年、当ページにお付き合いいただきましてありがとうございました。来年もまた、どうぞご贔屓に。当欄の新年の再開は... 未定です(笑)。一応4日としておきましょうか。でも、気が向いたら早めに始めるかも(^^;。それでは皆さん、良いお年を。(12/31)