2010年 11月 10日
特上のウィーンフィルの音 |
■すんません、今夜もまた深夜帰宅でありました(苦笑)。家に帰り着いたのが午前1時半過ぎ。今は午前2時半過ぎ。さすがに眠いです(苦笑)。というわけで、今夜はざっと簡単にまとめて、あとは後日気が向いたら(おいおい...)ということで。
■祝祭週間4公演目は代演がメストになった演奏会。メスト指揮は今夜だけ。ある意味ものすごく豪華。メストは、おそらく前日もしくは前々日に来日したはず。同じプログラムを先月ウィーンでも演奏しているけれど、日本に来てからはというと、当日の午前中にリハーサル、お昼に青少年向けの演奏会(1時間バージョン)、そして夜に本番という、かなり慌ただしいスケジュール。決して準備万端で臨んだわけではなかった。だから、と言ってしまうのもアレだけども、はい、「事故」はありました。FMの生中継を聴いていらした方にもわかったはず。かなり明らかな事故だったので。しかしながら、私としては、この演奏会は超弩級に素晴らしかったと、そう賛辞を送る次第。音楽の密度、オケのサウンドの密度・充実度の、なんとまぁ高かったことか。冒頭からして、オケから出てくる音のクオリティが格段に高い。ネルソンスの時が「ウィーンフィルの音」だったとしたら、今宵のそれは「特上のウィーンフィルの音」。ほんと、それくらい差がありましたわ。今さら申すまでもないけれど、指揮者ってのは実に不思議な存在ですな。自身では音を出さないのに、棒捌きと佇まい(とオーラ?)で、対峙するオケの音をガラリと変えてしまう。ネルソンスとの演奏も楽しかったし素晴らしかったけれど、今宵の演奏は、次元の異なるものだったと、そう感じました。もちろん、あくまでも私の所感ですよ。「意見には個人差があります」とはさだまさしの名言だけど、ほんと、その通りなので...。
■個人的には「トリスタン…」の方により大きな感銘を受けた。上記したように、冒頭から張り詰めた緊張感の中で音楽が展開。それが次第に高揚するに従って、大きなうねりになって行く。そのうねりの様のなんと美しいことか、そして官能的なことか。来日公演における「トリスタン…」というと、2003年の時のティーレマンとのものが、これまた超弩級に素晴らしい演奏として記憶に残っているけれど、今回のメストとの演奏も、異なったタイプの、しかし、同じく「トリスタン…」を熟知した指揮者による「本物の音楽」として、長く記憶に残るであろう名演となった。メストが手兵のクリーブランド管とやったとしても、ああいう演奏・音楽にはならんかったでしょう。一方、もしネルソンスが居残って今回同様のプログラムを指揮したとしても、やっぱり今宵のようにはならなかったはず。オペラを、「トリスタンとイゾルデ」を熟知し血肉にしている指揮者とオケが、がっぷり四つに組んだからこそ生まれた音楽。私、聴いてて何度も鳥肌が立ちました。ほんとに素晴らしかった。
■ブルックナーの方も、もちろん十二分に堪能。準備時間不足から来るちょっとしたアンサンブルのズレや、2楽章トリオ終結部付近から立て続けに発生した「事故」については「惜しかった」のひと言だけど、全編を通して貫かれた緊張感の中、随所で見られた音楽の美しさは、そりゃもうえも言われぬものだった。メストの指揮と音楽作りというのは、どちらかと言えば「流す」方向かと。音楽を縦の線で揃えるよりも、全体的な「流れ」の中で組み立てて行くといった感じ。それが、ブルックナーのあり方としては如何なものか、と思われる向きもあるかもしれないが、私としては「十分にあり」と、そう思った次第。今回はPブロックの舞台上手側2列目(実質的には1列目)、そう、つまりホルン会の真後ろという席だったので、彼らの音を「浴びて」聴けたことも、個人的には大変嬉しいことでありました。ほんと、いろーんな意味で「勉強」になりました。もっとも、ホルン会の音にオケ全体がかき消されてしまった部分も多かったけどね(^^;
■ご興味ある方もいらっしゃるかもしれませんので、今回彼らが使用したワーグナーテューバについてひと言。LMS氏は、個人所有のゲノッセンシャフトのB♭管、カンマーツェルトは、当団が従来から使用していたレヒナーのB♭管を使用しておりましたが、F管の2人は、新しい楽器、トムベックが音頭を取ってユングヴィルトに製作させた物を使用しておりました。レヒナーのそれに較べるとひとまわり大きな楽器。彼らの所感を総合すると、音量は出るとのことだけど、音色的には、従来のレヒナー(ゲノッセンシャフトタイプ)に分があるようです。
■で、主な演奏者紹介。コントラバスは引き続き7人で演奏しておりました。もしかしたら補充するのではないかと思ったのだけど、結局そのままということにした模様。
11月9日(火)19時開演:サントリーホール
指揮:フランツ・ウェルザー=メスト
ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」から「前奏曲と愛の死」
ブルックナー:交響曲第9番
<主な演奏者> *舞台オケ #待機団員 +補助団員
ワーグナー:「トリスタンとイゾルデ」
Fl 1:アウアー 2:フルーリー 3:ブラインシュミット
Ob 1:ホラーク 2:+ナトシュレーガー
EHrn #マダータナー
Cl 1:#オッテンザマー息子 2:ヴィーザー
BCl トイブル
Fg 1:トゥルノフスキー 2:エールベルガー 3:コブリッツ
Hrn 1アシ:*カンマーツェルト(銀行員) 1:LMS 2:リントナー 3:フラダー 4:トムベック
Trp 1:ミュルフェルナー 2:*ベルンドル 3:#ペヒャッカー
Trb 1:バウスフィールド 2:#ウィルソン 3:ヤイトラー
Tub ハルヴァクス
Timp ミッターマイヤー
Hrp *パプ
1Vn キュッヒル、シュトイデ
2Vn コヴァチ、シューベルト
Va リー、フローン
Vc バルトロメイ、ヴァルガ
Cb マイヤー、ヴィンマー
ブルックナー:交響曲第9番
Fl 1:アウアー 2:ブラインシュミット 3:フルーリー
Ob 1:ホラーク 2:+ナトシュレーガー 3:#マダータナー
Cl 1:#オッテンザマー息子 2:ヴィーザー 3:トイブル
Fg 1:トゥルノフスキー 2:エールベルガー 3:コブリッツ
Hrn 1アシ:リントナー 1:イェプストゥル 2:+ハルトナー(トンキュンストラー管) 3:フラダー 4:トムベック
5(W.Tub1):LMS 6(W.Tub2):*カンマーツェルト 7(W.Tub3):マイヤー 8(W.Tub4):+オプマン(ウィーン響)
Trp 1アシ:*ベルンドル 1:シュー 2:ミュルフェルナー 3:#ペヒャッカー
Trb 1:バウスフィールド 2:#ウィルソン 3:ヤイトラー
Tub ハルヴァクス
Timp ミッターマイヤー
1Vn キュッヒル、シュトイデ
2Vn コヴァチ、シューベルト
Va リー、フローン
Vc バルトロメイ、ヴァルガ
Cb マイヤー、ヴィンマー
■最後に今日の1枚。 終演後は、ホルン会の宴会に同席させていただきました。向かって左手前からオプマン、イェプストゥル、カンマーツェルト(銀行員との二足の草鞋)。向かって右手前からマイヤー、ハルトナー、リントナー。これで全員ではなく、写ってないところ(つまりカメラの直下)にLMS氏が座っています。トムベック、フラダーの両氏は欠席。マイヤー、ハルトナー、カンマーツェルト、オプマンの4人は、この日のブルックナーだけが出番。よって、この1曲のためだけに7日の日曜日に来日して、明日(というか今日)、オケ本隊よりも一足先に帰国するとのこと。いやはやご苦労様。あと、マイヤーは前日8日に晴れて40歳の誕生日を迎えましたので、その誕生会も兼ねての居酒屋宴会でありました。思えば、マイヤーと最初に話をしたのはちょうど10年前。当時は舞台オケのメンバーだったけれども、その後ウィーンフィルに入団し、数年前には(ついに!?)結婚して、今や2人の子持ちですよ。みんなの笑わせ役という位置づけは変わっていないようだけど、スリムだった体型がすっかり中年のそれになっておりまして、セバスチャン、キミも歳取ったね、と(^^;
■あれれ、今夜はざっと簡単に、なんて思ってたのに、結局なんだかんだと書いてしまった。もう4時! いい加減寝ないと明日(っていうか今日)が大変だ。おやすみなさい...。
■祝祭週間4公演目は代演がメストになった演奏会。メスト指揮は今夜だけ。ある意味ものすごく豪華。メストは、おそらく前日もしくは前々日に来日したはず。同じプログラムを先月ウィーンでも演奏しているけれど、日本に来てからはというと、当日の午前中にリハーサル、お昼に青少年向けの演奏会(1時間バージョン)、そして夜に本番という、かなり慌ただしいスケジュール。決して準備万端で臨んだわけではなかった。だから、と言ってしまうのもアレだけども、はい、「事故」はありました。FMの生中継を聴いていらした方にもわかったはず。かなり明らかな事故だったので。しかしながら、私としては、この演奏会は超弩級に素晴らしかったと、そう賛辞を送る次第。音楽の密度、オケのサウンドの密度・充実度の、なんとまぁ高かったことか。冒頭からして、オケから出てくる音のクオリティが格段に高い。ネルソンスの時が「ウィーンフィルの音」だったとしたら、今宵のそれは「特上のウィーンフィルの音」。ほんと、それくらい差がありましたわ。今さら申すまでもないけれど、指揮者ってのは実に不思議な存在ですな。自身では音を出さないのに、棒捌きと佇まい(とオーラ?)で、対峙するオケの音をガラリと変えてしまう。ネルソンスとの演奏も楽しかったし素晴らしかったけれど、今宵の演奏は、次元の異なるものだったと、そう感じました。もちろん、あくまでも私の所感ですよ。「意見には個人差があります」とはさだまさしの名言だけど、ほんと、その通りなので...。
■個人的には「トリスタン…」の方により大きな感銘を受けた。上記したように、冒頭から張り詰めた緊張感の中で音楽が展開。それが次第に高揚するに従って、大きなうねりになって行く。そのうねりの様のなんと美しいことか、そして官能的なことか。来日公演における「トリスタン…」というと、2003年の時のティーレマンとのものが、これまた超弩級に素晴らしい演奏として記憶に残っているけれど、今回のメストとの演奏も、異なったタイプの、しかし、同じく「トリスタン…」を熟知した指揮者による「本物の音楽」として、長く記憶に残るであろう名演となった。メストが手兵のクリーブランド管とやったとしても、ああいう演奏・音楽にはならんかったでしょう。一方、もしネルソンスが居残って今回同様のプログラムを指揮したとしても、やっぱり今宵のようにはならなかったはず。オペラを、「トリスタンとイゾルデ」を熟知し血肉にしている指揮者とオケが、がっぷり四つに組んだからこそ生まれた音楽。私、聴いてて何度も鳥肌が立ちました。ほんとに素晴らしかった。
■ブルックナーの方も、もちろん十二分に堪能。準備時間不足から来るちょっとしたアンサンブルのズレや、2楽章トリオ終結部付近から立て続けに発生した「事故」については「惜しかった」のひと言だけど、全編を通して貫かれた緊張感の中、随所で見られた音楽の美しさは、そりゃもうえも言われぬものだった。メストの指揮と音楽作りというのは、どちらかと言えば「流す」方向かと。音楽を縦の線で揃えるよりも、全体的な「流れ」の中で組み立てて行くといった感じ。それが、ブルックナーのあり方としては如何なものか、と思われる向きもあるかもしれないが、私としては「十分にあり」と、そう思った次第。今回はPブロックの舞台上手側2列目(実質的には1列目)、そう、つまりホルン会の真後ろという席だったので、彼らの音を「浴びて」聴けたことも、個人的には大変嬉しいことでありました。ほんと、いろーんな意味で「勉強」になりました。もっとも、ホルン会の音にオケ全体がかき消されてしまった部分も多かったけどね(^^;
■ご興味ある方もいらっしゃるかもしれませんので、今回彼らが使用したワーグナーテューバについてひと言。LMS氏は、個人所有のゲノッセンシャフトのB♭管、カンマーツェルトは、当団が従来から使用していたレヒナーのB♭管を使用しておりましたが、F管の2人は、新しい楽器、トムベックが音頭を取ってユングヴィルトに製作させた物を使用しておりました。レヒナーのそれに較べるとひとまわり大きな楽器。彼らの所感を総合すると、音量は出るとのことだけど、音色的には、従来のレヒナー(ゲノッセンシャフトタイプ)に分があるようです。
■で、主な演奏者紹介。コントラバスは引き続き7人で演奏しておりました。もしかしたら補充するのではないかと思ったのだけど、結局そのままということにした模様。
11月9日(火)19時開演:サントリーホール
指揮:フランツ・ウェルザー=メスト
ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」から「前奏曲と愛の死」
ブルックナー:交響曲第9番
<主な演奏者> *舞台オケ #待機団員 +補助団員
ワーグナー:「トリスタンとイゾルデ」
Fl 1:アウアー 2:フルーリー 3:ブラインシュミット
Ob 1:ホラーク 2:+ナトシュレーガー
EHrn #マダータナー
Cl 1:#オッテンザマー息子 2:ヴィーザー
BCl トイブル
Fg 1:トゥルノフスキー 2:エールベルガー 3:コブリッツ
Hrn 1アシ:*カンマーツェルト(銀行員) 1:LMS 2:リントナー 3:フラダー 4:トムベック
Trp 1:ミュルフェルナー 2:*ベルンドル 3:#ペヒャッカー
Trb 1:バウスフィールド 2:#ウィルソン 3:ヤイトラー
Tub ハルヴァクス
Timp ミッターマイヤー
Hrp *パプ
1Vn キュッヒル、シュトイデ
2Vn コヴァチ、シューベルト
Va リー、フローン
Vc バルトロメイ、ヴァルガ
Cb マイヤー、ヴィンマー
ブルックナー:交響曲第9番
Fl 1:アウアー 2:ブラインシュミット 3:フルーリー
Ob 1:ホラーク 2:+ナトシュレーガー 3:#マダータナー
Cl 1:#オッテンザマー息子 2:ヴィーザー 3:トイブル
Fg 1:トゥルノフスキー 2:エールベルガー 3:コブリッツ
Hrn 1アシ:リントナー 1:イェプストゥル 2:+ハルトナー(トンキュンストラー管) 3:フラダー 4:トムベック
5(W.Tub1):LMS 6(W.Tub2):*カンマーツェルト 7(W.Tub3):マイヤー 8(W.Tub4):+オプマン(ウィーン響)
Trp 1アシ:*ベルンドル 1:シュー 2:ミュルフェルナー 3:#ペヒャッカー
Trb 1:バウスフィールド 2:#ウィルソン 3:ヤイトラー
Tub ハルヴァクス
Timp ミッターマイヤー
1Vn キュッヒル、シュトイデ
2Vn コヴァチ、シューベルト
Va リー、フローン
Vc バルトロメイ、ヴァルガ
Cb マイヤー、ヴィンマー
■最後に今日の1枚。
■あれれ、今夜はざっと簡単に、なんて思ってたのに、結局なんだかんだと書いてしまった。もう4時! いい加減寝ないと明日(っていうか今日)が大変だ。おやすみなさい...。
by wph1842
| 2010-11-10 04:01
| ウィーンフィル